水球日本代表 〜ブルボンウォーターポロクラブ柏崎〜

 新潟県柏崎市を拠点に活動する「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」(ブルボンKZ)の選手6人が中心となった水球の男子日本代表。先月のロンドン五輪アジア予選で28年ぶりの出場権を逃したが、4年後のリオデジャネイロ五輪こそ。チームを支える人や地域の熱意と歴史を探った。

 日本代表主将を務め、ブルボンKZの監督兼任選手の青柳勧(31)が新潟産大の助手兼水球部監督として新潟に拠点を移したのは2009年秋のことだ。筑波大の先輩でもあり、青柳を高校時代から知る新潟産大の広川俊男学長(62)の誘いだった。

 広川学長は、青柳には水球部の監督として学生と練習してもらい、現役も続けてもらおうと思っていた。だが、青柳の考えは違った。「ここで新たに社会人チームをつくりたい」

 ■新潟国体が契機

 09年の夏ごろ、広川学長が、高校生の指導で県内を訪れていた青柳と柏崎市内の居酒屋を訪れたときのことだ。青柳の顔を知らなかった女性店員に「何のスポーツをしてると思う?」と聞くと、逆三角形の体をみて「水球ですか」と一発で言い当てた。青柳は、国内でメジャースポーツではない水球が、柏崎という地方都市で認知されていたことに感動した。

 柏崎で水球が盛んになったきっかけは1964年の新潟国体だ。その水球競技の会場に決まったので、東京教育大(現筑波大)から柏崎高に指導者が赴任し、強化にあたった。国体の年に新潟地震が起きて競技自体は中止されたが、柏崎高は後に全国優勝し、日本代表になったOBもいた。

 そうした人材が、地元で指導や普及を続けてきた。小学校から高校までのチームを持つ「柏崎アクアクラブ」の小学生チームはジュニアオリンピックで優勝し、中学生も同大会で上位入賞の経験がある。

 ■ブルボンが支援

 ただ、社会人クラブを立ち上げるとなると、少し話が違ってくる。集まった選手が働く場所を確保しなければならないからだ。

 青柳は代表級の選手に声をかけながら、広川学長とともに県内企業を回り、クラブスポンサーになってもらったり、選手を社員として受け入れてもらえるようお願いしたりした。トップ選手の青柳自らが「地域クラブの意義」を語り、理解を求めていった。

 地元製菓会社「ブルボン」が2010年にクラブの命名権を得て、リオデジャネイロ五輪がある2016年までの支援を約束してくれた。現在、チーム11人のうちブルボンで働く2人を含む計5人が柏崎市長岡市内で働いている。

 働きながら水球に打ち込める環境づくりは、大卒後の選手が収入を得ながら競技を続ける場所がなかった水球界で画期的なことだった。

 選手は年に数回、小学校を指導し、地域貢献や普及にも励む。五輪予選のときは市内でパブリックビューイングもあった。クラブの理事長も務める広川学長は「地方都市で、ここまで水球ができる環境が整ったところはないでしょう。地域振興にもつながりつつあります」と語る。(有田憲一)

   ◇   ◇

 ■「チーム・土地の密接さ」魅力 UX新潟テレビ21の大島アナに聞く

 この1年間、ブルボンKZへの取材を続けているUX新潟テレビ21の大島直子アナウンサーに、改めてチームの魅力を語ってもらった。

 東京にいる友人がクラブチームで水球をしていて、「新潟に青柳勧というすごい選手がいる」と聞いたんです。去年の1月に長岡市のプールに行って、新潟産大との合同練習におじゃましたのが最初でした。

 第一印象は「サメの大群」。球のないところでも、あちこちで選手同士の激しいとっくみあいがあった。私は水泳が苦手なんです。立ち泳ぎをしながら、まるで動物のように動く姿にまず憧れました。

 でもプールサイドに上がればみんな陽気で、気さく。そのギャップも良かったんです。

 その後、柏崎の子どもたちに水球を教える姿を取材し、自分たちのためだけでなく、地域の競技力の底上げもしている姿が見えてきました。

 昨夏、ブルボンKZが強豪大学を呼んで公開試合をした時は、地元の方の応援の力に驚きました。かつての水球の盛り上がりを知っているお年寄りは「若い人たちが、改めてこんな場をつくってくれてうれしい」と話していました。「娘の友人が水球をしているから」と会場に駆けつけた主婦の方もいました。

 チームや水球という競技と、柏崎という土地が密接になっている。それが一番、ひきこまれている理由かもしれませんね。

 ロンドン五輪出場がかかった先日の試合も、千葉県習志野市の試合会場に取材に行きました。結果は残念でした。国同士の戦い。そう簡単には勝てませんよね。選手たちは最善を尽くしたと思います。

 会場で声援を送った約3千人の中には、バスなどで柏崎から駆け付けた約100人もいました。選手たちが地元に愛されている証拠です。

 4年後こそ、ブルボンKZの選手たちが中心になって五輪に行けると信じています。

http://www.asahi.com/sports/spo/TKY201202070116.html